ドイツ語手紙のキソ知識

ドイツ語手紙のキソ知識 の詳細

ドイツ語で、手紙やEメールの例文集はいくつも出版されており、最近では、Ｅメールに特化しているものさえある。それらは、基本的に、手紙等の書式等について、簡単に解説した後、目的別に分類した例文をたくさん記載したものである。そして、その例文は、きちんと整理されて、多ければ多いほど、便利なのは当然であり、読者も、自分の状況によく似た例文を探し求めて、適当に文を変更して利用していると思う。例文集はそのための、実用マニュアルなのだからそれで十分なはずと信じていた。しかし、本書は違う。書名をよく見てほしい。｢ドイツ語の手紙の書き方｣ましてや｢ドイツ語の手紙例文集｣などではなく、｢ドイツ語手紙のキソ知識｣である。そもそも、110ページ程度の本書に、多くの例文を載せられるわけもなく、著者にもその意図はない。本書では、どうしてこう書くのかとか、こんな場合はどうするのかなど、懇切丁寧に｢語り口調｣で解説したもので、あたかも、真鍋先生が、目の前で講義されているようである。特に、S.30の｢今日は時間がないので、長い手紙になって申し訳ありません｣とか、S.75に｢この本にかぎらず、他の参考書でも、そこに出ている例は、如何に立派なものであっても、単なる｢一時しのぎ｣的のものにすぎないのです｣との言葉は、よく考えもせずに、例文を適当に｢小細工｣したり、｢切り貼り｣してそれで良しとしている、自分に対する警句として受けとめなければなるまい。また、たとえば、S.79のzur passenden Zeitのzurが、zuとeinerの結合形であること、S.57の｢信仰、帰依｣のin、S.85のfest/stellenやS.89のvergoennenの説明など、自分ではなんとなく、独和辞典の語義、用法で満足してものについても納得できたりして、ドイツ語のより正確な理解に資する記述も随所にありありがたい。本書は、世間に流布する多くの｢手紙の例文集｣的な本を利用する前に、ドイツ語（もちろん日本語であってもその心は根本においては同じであると思うのだが､)で手紙などを書くための心構えを説くもので、いささか古くなったとはいえ、ドイツ語で手紙を書こうとする中・上級者に強くお勧めしたい。本書読了後は、幾多の｢手紙の例文集｣もその利用価値を増すことになると確信する。また、手紙を書かない人であっても、ドイツ語力が少し上がることは間違いない。