生きる 劉連仁の物語 (単行本図書)

生きる 劉連仁の物語 (単行本図書) の詳細

大戦時、日本の労働力不足を補うために中国から4万人弱の人々が強制移送された。その中の一人劉連仁は北海道の炭鉱に送られ、劣悪な環境下過酷な労働を強いられた。終戦間際に脱走に成功したが、降雪地帯の山で隠れ生きるのは苦難の連続で、ともに逃亡した仲間とも逸れ一人になってしまう。故郷を離れ、強制労働させられた青年の連行、労働、脱走と逃亡の日々を描き、日本による強制労働の現実と、その後の姿勢について問う作品。戦争の悲惨さを伝える本は多くあるものの、戦時中の日本人の他国での振る舞いを伝える本はそう多くないと思っていたので、その点とても新鮮です。しかも作者は日本人。なんとか否定したいような、胸が痛くなる思いを感じながら読みました。これが「過去に目を閉ざすものは、結局のところ、現在にも盲目となる」ことなんでしょうね。強制労働の事実を描き、無事彼が帰郷するところで終わりかと思ったら、エピローグでの作者の持論を展開する部分が意外と長かったので、作品としてはちょっと冗長に感じました。この部分は、あとがきとか参考資料とかにまとめた方がすっきりしそうですが、そうすると読んでもらいにくくなるんでしょうか。日本人作家の作品らしく難易度低め。小学校高学年でも充分読めます。