イザヤ書〈上〉 (1961年) (岩波文庫)

イザヤ書〈上〉 (1961年) (岩波文庫) の詳細

岩波文庫版・旧約聖書の、預言書の一つ。シリーズの他の巻と同じく関根正雄氏による訳注で、歴史的背景と文献学的なテクスト解説があるので本文の内容を立体的に捉えることができる。この文庫はイザヤ書の三十九章まで、いわゆる第一イザヤ書といわれる部分だが、イザヤ本人と思われる預言のほかにイザヤのヴィジョンを借りた後世の言葉も複数入っているらしいし、文体も詩文・散文・その混合などヴァラエティに富んでいる。イザヤの預言者としての使命は、おごり高ぶって頑なな者たちに罪と罰を語ることでさらに高ぶらせ頑なにさせ、彼らの滅びを確実なものにするというある種不条理なものだったが、その役目を忠実に果たしていく。預言者とは誰も求めてもいないのに聞きたくもない神からの言葉を語りだす者だというのはどこかで聞いたが、まさにイザヤはその通りの姿だ。それはよく勘違いされる「予言者」との根本的な違いで、この預言者の姿が西洋の詩人のあり方に受け継がれているのだと思う。全体的に人々のおごり高ぶりと彼らの滅びの姿を何度も語り継いでいて、聞く者たちを怒らせたことは想像に難くない。今でも、同じようにいわれたら多くの人がいい気持ちがしないだろう。それでも、人が聞きたい言葉をいうほうが何倍も楽だったはずなのに、こうして語りかけるのには相当の覚悟と確信がないと出来ないことだろう。下巻は第二イザヤ・第三イザヤを収録しているという。楽しみ。